治療コラム

クローン病とは? 症状・原因・治療方法等をわかりやすく解説

クローン病とは? 症状・原因・治療方法等をわかりやすく解説

クローン病は炎症性腸疾患の一つで、厚生労働省の指定難病です。あまり聞くことのない病名で、不安に思う方もいるかもしれません。
しかし最近の研究成果により、原因の解明や新しい治療薬なども登場し、症状もコントロールできるようになってきました。
この記事では、クローン病の症状、原因、治療法について、わかりやすく解説していきます。病院でクローン病と診断された方、身近な人がクローン病になった方など、クローン病についてわかりやすく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

クローン病とは

クローン病(Crohn’s Disease)とは、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)の一つです。

おもに若年者に発症し、口腔から肛門までの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍が起こります。小腸と大腸を中心に発症しますが、小腸末端部が発症しやすい部位です。
免疫異常などが原因と考えられていますが、未だはっきりしていません。
発症すると長期間の治療が必要な慢性の病気です。治療期間の中でも、病状が悪い時期(再燃期)と落ち着いている時期(寛解期)を繰り返します。
近年、患者数は急激に増え続けており、厚生労働省の指定難病となりました。治療には難病医療費助成制度(医療費の支援)が受けられます。

クローン病の症状

腹痛、下痢、体重減少、発熱などがよくみられる症状です。
病変ができる場所によって症状が異なりますが、腹痛と下痢の症状は半数以上の方に起こります。
合併症に、腸の狭窄(狭くなること)、穿孔(穴があくこと)、瘻孔(ろうこう:腸や他の臓器と細い通り道ができること)、痔などの肛門部病変などがあげられます。

クローン病と類似した症状が現れる疾患

クローン病とよく似た症状で、判別が難しい疾患は以下の3つです。

  • 潰瘍性大腸炎
  • NSAIDs潰瘍
  • 腸結核

いずれも特徴的な症状は、腹痛や下痢を起こします。
それぞれ解説いたします。

潰瘍性大腸炎

クローン病と同じ炎症性腸疾患に分類され、厚生労働省の指定難病になっています。
おもな症状として、血便や下痢、腹痛などの症状が慢性的に続くのが特徴です。大腸の粘膜(もっとも内側の層)にびらんや潰瘍ができる疾患です。上行性(口側に広がる性質)があり、直腸から大腸全域に拡がります。
発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性は25?29歳ですが、若年者から高齢者まで発症し、男女比はありません。
診断には、問診や採血などで感染症の有無を検査し、大腸内視鏡検査のときに組織を採取して調べる検査(生検)をします。

NSAIDs潰瘍

NSAIDs潰瘍とは、熱、痛み、炎症を抑える薬の副作用によって起きる潰瘍です。「Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs」の頭文字を取っており、非ステロイド性抗炎症薬と訳します。
自覚症状は上腹部の痛みが多く、胃もたれ、胃の不快感などです。症状が進み出血を伴う場合は、運動時の息切れ、めまい、立ちくらみなどの症状があり、吐血、黒色便が現れることもあります。

腸結核

腸結核とは、結核菌が直接または間接的に消化管や近くのリンパ節へ感染することで起きる腸管の炎症性疾患です。
近年は減少傾向にありますが、高齢者を中心に、年間約250例が診断されています。
自覚症状はクローン病と似ており、腸結核の診断は内視鏡検査時の生検の結果でわかるため、検査を受けるまでは判別がつきません。

クローン病の原因

クローン病の原因ははっきりしていません。
以下にあげる説が、候補として考えられてきました。

  • 遺伝的な要因の関与
  • 結核菌と類似の細菌や麻疹ウイルスによる感染症
  • 食事から摂取した何らかの成分が、腸管粘膜に異常な反応を引き起こしている
  • 腸管の微小な血管の血流障害

最近の研究では、遺伝や環境を背景に、食事や腸内細菌に対して免疫異常を起こして発症することが考えられています。

クローン病の検査方法

クローン病の検査方法は、問診で症状を伺ったのち、血液検査を行います。
血液検査で炎症反応や貧血などが確認された場合は、クローン病が疑われるため、内視鏡検査(大腸カメラ検査)などの画像検査を実施します。特徴的な病変が発見された場合、クローン病と診断されます。

クローン病の治療方法

クローン病の治療方法は、おもに以下の4つです。

  • 栄養療法
  • 内科治療
  • 外科治療
  • 内視鏡的治療

栄養療法と内科治療(薬物療法)が主体となりますが、腸閉塞、穿孔、膿瘍などを併発した場合は、外科治療が必要になります。
それぞれ詳しく解説します。

栄養療法

栄養療法はクローン病にとって、副作用の少ない安全で重要な治療法です。
日々の食事をコントロールして、消化管の安静と食事から受ける刺激を取り除き、炎症を抑えます。
脂質が炎症に関与することが分かっており、脂質の多い食事を避けることや、脂質の少ない成分栄養剤の服用がおもな治療法です。
症状により、食事から栄養の摂取が難しい状態の場合は、点滴から栄養を補う(中心静脈栄養)治療を行います。

内科治療

症状がある活動期には、炎症を抑える効果のあるステロイド剤や免疫調整薬などの内服薬を服用します。
症状が改善した場合でも、再燃(ふたたび症状が出ること)予防に継続して投与します。
以前はステロイド剤を長期間服用すると、副作用が問題でした。しかし、最近では副作用の比較的少ないステロイド剤も使用できるようになっています。
また近年は、生物学的製剤と呼ばれる新しい注射剤が使用されるケースが増えてきました。
治療効果の高いお薬ですが、定期かつ継続して注射を行わなければなりません。病院で点滴を行うタイプと自分で皮下注射(自己注射)するタイプがあり、病状やライフスタイルに合わせた方法を選んで治療します。
そのほか薬物治療ではありませんが、血球成分除去療法が行われることもあります。

外科治療

腸に高度な狭窄や瘻孔(腸や他の臓器と細い通り道ができること)などの合併症が起きた場合には、外科手術が必要です。
痔瘻(じろう:膿が出る穴を伴う痔)など、肛門周囲に症状がある場合にも、手術が必要になる場合があります。
手術にて症状が改善されたあとは、症状の再燃を予防するため、内科治療を実施します。

内視鏡的治療

狭窄が起きた合併症には、内視鏡にて狭窄部を拡張する(内視鏡的バルーン拡張術)治療が行われることもあります。
手順は以下の通りです。

  1. 狭窄部手前まで内視鏡でガイドワイヤーを運ぶ
  2. ガイドワイヤーを狭窄部の先まで進める
  3. ガイドワイヤーを介して、バルーンを狭窄部に挿入する
  4. バルーンを膨らませ、狭窄部を広げる

内視鏡バルーン

小腸の診断には、カプセル内視鏡が役立っています。
腸に狭窄がある場合、詰まってしまう恐れがあるで、一度ダミーのカプセルで通過できるかの確認をしてから実施します。

クローン病は治る?

クローン病にはさまざまな症状があり、原因もはっきりわかっていないこともあるので、一言で「治る」とは言えませんが、効果的な生物学的製剤なども開発されていて、症状のコントロールができるようになってきました。
症状の寛解期では、健康な人と変わりなく就学や就労ができます。症状の度合いや通院により制限される場合もありますが、適度な運動や妊娠・出産も可能です。
治療法も増えてきており、自身の望む生活に合わせた選択もできるようになってきています。主治医と相談してより良い治療をめざしましょう。

まとめ

クローン病は炎症性腸疾患の一つで、厚生労働省の難病に指定されています。おもに若年者に発症し、近年患者数は急激に増え続けている状況です。腹痛、下痢、体重減少、発熱などがよく見られる症状で、腹痛と下痢の症状は半数以上の方に起こります。
治療方法は、栄養管理と投薬の内科的治療が中心です。しかし、腸管の狭窄、穿孔、瘻孔、痔などの合併症が発生した場合は、外科手術や内視鏡手術が行われます。
最近では、効果的な治療薬も開発されて、症状のコントロールができるようになりました。
症状の寛解期では、健康な人と変わりなく、就学や就労が可能です。
治療法の選択肢も増えてきていますので、自身のライフスタイルにあった方法を主治医と相談して、より良い治療をめざしましょう。

監修

医療法人社団晃輝会
理事長 医学博士 大堀 晃裕

日本大腸肛門病学会 専門医・指導医 https://www.coloproctology.gr.jp/

大学病院と総合病院に長年従事し、肛門病疾患を中心に大腸肛門病に対して多数の検査実績、手術への豊富な執刀経験を持ちます。
日本大腸肛門病学会の中でも数少ない専門医・指導医として、治療だけでなく技術指導を行なっています。
現在医療法人社団晃輝会の理事長として大腸肛門病・消化器内科の専門クリニックを2院展開し、胃・大腸内視鏡検査を年間2,700件以上、手術も年間500件あまり手掛けています。

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