治療コラム

痔によい栄養素と食べ物: 予防になる食生活のポイントについても紹介

痔によい栄養素と食べ物: 予防になる食生活のポイントについても紹介

痔は肛門の周りにできる疾患です。痔の症状を悪化させないためには、排便時に肛門へ負担をかけないことが重要です。
便秘や下痢は肛門への負担が大きくなってしまうので、痔の症状を悪化させないためには、便の状態に気を配る必要があります。

この記事では、痔に良い栄養素が入った食べ物を紹介いたします。
痔の予防になる食生活のポイントについても紹介していますので、ぜひ参考にして下さい。

痔について食生活で気をつけるポイント

痔を改善するためには、排便の仕方や便の状態がとても重要です。良いとされる便や排便は、肛門に負担がかからないからです。その逆に、便秘や下痢は肛門に負担がかかるため、避けなければなりません。

便の状態の良し悪しは腸内環境が関係しており、腸内に生息する細菌が腸内環境を良くするカギであるということが分かっています。
腸内の細菌は、善玉、悪玉、どちらでもない中間の3種類で構成されており、善玉菌が占める割合を増やすことが腸内環境を良くします。
痔が改善する良い便を作るには、腸内環境を良くすることが重要で、善玉菌が増える栄養素を取り入れた食生活にするのがポイントです。

痔によい栄養素と食べ物

腸内に生息している善玉菌の割合を増やすことが、最終的に痔にも良いことがわかりました。そこで、善玉菌を増やしてくれる栄養素をご紹介します。主に以下の4つです。

  • 食物繊維
  • 乳酸菌
  • オレイン酸
  • オリゴ糖

これらが多く含まれている食べ物を摂取し、腸内環境を良くすることが、痔の改善に効果的です。それぞれの栄養素を詳しく紹介します。

食物繊維

食物繊維は食べ物の中に含まれており、人の消化酵素で消化できない物質で、整腸作用があります。便通を整えてくれ、便秘を防ぐには欠かせないものです。
水に溶けない『不溶性食物繊維』と水に溶ける『水溶性食物繊維』の2種類があります。

不溶性食物繊維

水分を吸ってふくらむことで、便の量を増やすとともに、腸がぜん動運動するように刺激します。
ぜん動運動とは、腸が収縮したり、弛緩したりする動きのことで、腸の内容物を移動させる動きのことを言います。ぜん動運動が適切に行われないと、便秘や下痢の原因になります。

不溶性の食物繊維が豊富に含まれている食べ物を表にまとめました。

米・パン 玄米、雑穀米、ライ麦パン、全粒粉パン
精製前の米や、精製前の小麦から作られたパンの方が食物繊維は多いです。
野菜 れんこん、さつまいも、じゃがいも、ブロッコリーなど
果物 栗、アボカド、ラズベリー、ブルーベリーなど
きのこ類 えのき、しいたけ、しめじ、エリンギなど
その他 納豆
食物繊維だけでなく、納豆菌が善玉菌の栄養になります。

水溶性食物繊維

水に溶けてゲル状成分になることで、便をやわらかくしたり、腸内に溜まった不要な胆汁酸やコレステロールを吸着したりして体外に排出させます。
水溶性の食物繊維が豊富に含まれている食べ物を表にまとめました。

海藻類 昆布、めかぶ、わかめ
食物繊維のほかに、善玉菌を増やしてくれる、アルギン酸、カルシウム、ヨードが含まれていています。
野菜 ごぼう、にんじん、大根、玉ねぎ、トマト、キャベツ、ほうれん草など
果物 あんず、いちじく、プルーン、アボカド、りんごなど
ネバネバ食材 山芋、おくら、モロヘイヤなど

乳酸菌

乳酸菌は悪玉菌の繁殖を抑えて、腸内細菌のバランスをとる役割を果たし、腸内環境を整えてくれます。乳酸菌は、人体に有益な菌であり、善玉菌の一つです。
腸のぜん動運動を促す作用があり、便通の改善をしてくれます。
乳酸菌が多く含まれる食べ物を表にまとめました。

ヨーグルト、乳酸菌飲料 ヨーグルトや乳酸菌飲料の乳酸菌には、たくさんの種類があります。
人により相性が異なるので、1週間くらい試してみて効果がなかった場合は、別の菌の商品に変えてみましょう。
味噌、しょう油 味噌、しょう油は大豆の発酵食品であり、植物性の乳酸菌です。
植物性乳酸菌は胃酸などの消化液にも負けずに、生きて腸に到達できる微生物( プロバイオティクスと呼ばれます)として、注目されています。

オレイン酸

オレイン酸は、植物や魚の脂に多く含まれる不飽和脂肪酸の一つです。小腸で吸収されにくい特徴があります。腸に刺激を与え、スムーズな排便を促します。
オレイン酸が多く含まれる食べ物を表にまとめました。

オリーブオイル 1日に大さじ1〜2杯を摂取の目安にするとよいでしょう。 LDLコレステロールを下げる効果もあります。
アボカド 水溶性、不溶性の両方の食物繊維も多く含まれており、栄養価の高い果実です。
オリーブオイルとともに食べると効果が高まります。

オリゴ糖

オリゴ糖は、ビフィズス菌などの善玉菌の栄養源となります。ビフィズス菌などの腸内細菌を増やす効果や整腸作用もあります。
オリゴ糖が多く含まれている食べ物を表にまとめました。

大豆 大豆そのものだけでなく、大豆を発酵させて作られた味噌やしょう油などにも含まれています。
野菜 ごぼう、玉ねぎ、とうもろこしなど
その他 バナナ、はちみつなど

痔によくない食べ物

腸内に悪玉菌が多くなると、便秘や下痢になりやすくなり、痔が悪化するおそれがあります。痔の症状を改善したいのであれば、悪玉菌を増やす食べ物にも注意しましょう。
悪玉菌を増やすとされているのは、食品添加物や動物性の食品です。おいしく手軽に食べられる食べ物も多いため、つい多く摂取してしまわないように注意しましょう。
具体的には、以下のような食べ物です。

  • インスタント食品、ファストフード
  • 動物性タンパク質、動物性脂肪(牛肉、豚肉など)
  • 刺激物(香辛料)
  • 冷たい食べ物、飲み物
  • アルコール

痔の予防になる食生活のポイント

痔を予防するためには、これまでご紹介してきたような腸内環境を整えるような食べ物を積極的に摂取することが大切です。
食べ物の他にも、痔の予防に大切なポイントが3つありますので、ご紹介いたします。

1.水分を十分にとる

便をやわらかくするためにも、水分は多く摂りましょう。目安は1日1.5~2リットルです。

食べた物の水分の多くは大腸で吸収されます。身体の水分が不足していると、水分を保とうとして、身体から水分を排出するのを防ごうとします。その結果、排便に適切な水分量以上の水分を吸収してしまい、便が固くなってしまうのです。便が固くなると、便秘の原因や排便に負担がかかるようになってしまうので、水分は十分にとるようにしましょう。

水分をとる時に気をつけていただきたいのが、緑茶やコーヒーなどのカフェインを含む飲み物です。これらの飲み物は、水分には含めないようにしてください。カフェインを含む飲み物は利尿作用があるためです。

また、人が一度に吸収できる水分は200~250mlと言われており、コップ1杯程度です。一度に大量の水分を摂取しても、吸収されなかった水分は体外に排出されるだけで、意味がありませんので注意してください。

2.朝起きたらすぐにコップ1杯の水を飲む

起きたらすぐにコップ1杯の水を飲むのがおすすめです。朝食前の何も入っていない胃袋に水が入ることで、胃結腸反射という作用が働きやすくなり、刺激が大腸にも伝わります。大腸が刺激されることで、自然な便意を感じやすくなります。

3.朝食を食べる

起きたらすぐに水を飲むのに加え、朝食を食べて、腸のぜん動運動をさらに促しましょう。メニューの指定は特にありません。食べやすいものを少しでも食べられれば十分です。

まとめ

痔の症状を改善させるためには、排便の仕方や便の状態がとても重要です。便の状態を良くするには、善玉菌が増える栄養素を取り入れた食生活を心がけ、腸内環境を良くする必要があります。
また、朝起きたらすぐにコップ1杯の水を飲むこと、朝食を食べることも、腸のぜん動運動につながり、自然な便意を感じやすくなります。
善玉菌を増やす食事と、腸のぜん動運動を助ける習慣を身につけ、痔にやさしい排便ができるようになりましょう。

当院の大腸内視鏡検査

監修

医療法人社団晃輝会
理事長 医学博士 大堀 晃裕

日本大腸肛門病学会 専門医・指導医 https://www.coloproctology.gr.jp/

大学病院と総合病院に長年従事し、肛門病疾患を中心に大腸肛門病に対して多数の検査実績、手術への豊富な執刀経験を持ちます。
日本大腸肛門病学会の中でも数少ない専門医・指導医として、治療だけでなく技術指導を行なっています。
現在医療法人社団晃輝会の理事長として大腸肛門病・消化器内科の専門クリニックを2院展開し、胃・大腸内視鏡検査を年間2,700件以上、手術も年間500件あまり手掛けています。

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※土曜日午前:NTT東日本関東病院の内視鏡部長 大圃先生のグループによる大腸内視鏡検査を行っております。
※土曜日:東京山手メディカルセンターの医師による消化器内科・クローン病・潰瘍性大腸炎の専門外来を行っております。
※午前の診察は予約を取らせて頂いてますが、予約のない方も診察は可能です。お電話にてお問い合わせください。
●女性医師による診療
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