治療コラム

産後のいぼ痔の押し込み方とは?治療法や予防法も併せて解説

産後のいぼ痔の押し込み方とは?治療法や予防法も併せて解説

「産後、肛門に違和感があるようになった」
「排便のあとティッシュに血が付着する」
「飛び出したいぼ痔を手で戻してもいいの?」

と、産後のいぼ痔で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

妊娠・出産後にいぼ痔になる方は少なくありません。この記事では、産後いぼ痔になりやすい理由・押し戻し方などの対処法・治療・予防法などについて解説します。産後のいぼ痔で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

いぼ痔(痔核)とは

肛門粘膜の下には、直腸静脈叢という網目状の血管などが張り巡らされ、肛門を閉じるクッションの役割をする部位があります。
いぼ痔(医学的には痔核という)とは、このクッションをつなぎ合わせている組織がゆるみ、粘膜や静脈が大きくなってできたものです。

肛門のふちから約1.5cm奥には「歯状線」と呼ばれる粘膜と皮膚の境目の部分があります。
歯状線より口側にできる痔を「内痔核(ないじかく)」、歯状線よりお尻の皮膚に近い部分にできる痔を「外痔核(がいじかく)」といいます。

内痔核の症状は、排便したときの出血や便が残っている感じなどです。大腸と同じ自律神経に支配されているため、ほとんど痛みを感じません。しかし、急に腫れたり炎症を起こすと痛むことがあります。

内痔核は程度により以下4つのグレードに分類(Goligher分類)されます。

一方、外痔核は脊髄神経の支配下にあるため、痛みを感じやすくなります。運動したり重いものを持ったりすると、いぼ痔が飛び出すケースもあります。

妊娠から出産後にかけていぼ痔を発症しやすい理由

妊娠中から出産後は、次の3つの理由でいぼ痔を発症しやすくなります。

  • 直腸まわりの血管が大きくなった子宮に押され、肛門まわりの血流が悪くなる
  • 分娩時のいきみで、排便時の何倍もの力が肛門付近にかかる
  • ホルモンの影響、授乳や運動不足などで便秘がちとなり、いきむ回数が増える

いぼ痔は出産後数週間で自然に改善される?

妊娠や出産がきっかけでできたいぼ痔は、産後、子宮の大きさが元に戻るにつれ、肛門のうっ血もなくなるので症状は落ち着いてくる場合もあります。
ただし、しぼんだ状態の痔は残ることもあるので、外痔核の場合はお尻を拭くときにわずらわしく感じるかもしれません。

いぼ痔の対処法

いぼ痔が気になるからといって触ったり、こすったりせず、肛門付近は清潔に保ちましょう。排便後は温水洗浄便座を使用したり、入浴のときには温水シャワーでやさしく洗ったりします。
ただし、洗いすぎるとかえって悪化する場合もあるため、気をつけてください。

いぼ痔の押し込み方

前項でも触れたように、内痔核にはグレードがあります。Ⅲ度になると自然には戻らないため、痛みがない場合は、飛び出した部分を中に押し戻しましょう。

戻すときのコツは、指で押さえながら立ち上がることです。排便後に肛門をきれいにしたら、便座に座ったままゆっくり指で押し戻し、押さえたまま立ち上がるようにしましょう。その際、爪で傷つけたり、力を入れすぎないよう注意が必要です。

ただし、肛門の中に戻りにくかったり、出血や痛みがある場合は無理やり押し戻さず、ひどくなる前に病院を受診しましょう。

いぼ痔で病院を受診する目安

デリケートな場所のため、多くの方はいぼ痔で病院へ行くのをためらっているかもしれません。しかし、痛みや出血が続く場合は、早めに病院を受診しましょう。
いぼ痔ではなく、直腸脱や直腸・肛門ポリープなど別の病気の可能性もあるため、肛門科のある病院で診てもらうことが大切です。

また、いぼ痔が大きくなって出血量が多くなると、貧血になることがあります。立ちくらみ・息切れ・疲労感・顔色が青白いなど症状は貧血のサインですので、見逃さないようにしてください。

いぼ痔が肛門のなかに戻りにくくなった場合も、早めに病院を受診しましょう。

いぼ痔の治療法

いぼ痔の治療法は主に以下3つです。

  • 座薬と軟膏
  • 便秘治療
  • 手術

それぞれ解説していきます。

治療法1座薬と軟膏

Ⅰ度・Ⅱ度のいぼ痔の治療には、座薬と軟膏を使用します。
座薬や軟膏は患部に直接塗るタイプで、うっ血・腫れ・出血などの症状を軽減してくれます。

治療法2便秘治療

座薬と軟膏に合わせ、排便時のいきみを避けるために緩下剤も処方されるでしょう。
薬だけでなく、排便習慣や生活習慣に対する指導も行われることもあります。
排便時間は短く、なるべく3分以内に終えるようにしましょう。

治療法3手術

薬による治療の効果がなく、いぼ痔が悪化しⅢ~Ⅳ度の脱出して戻りにくい・戻らないいぼ痔に対しては手術を行う場合があります。
代表する手術例は、以下の3つです。

  • 痔核そのものを切除する「切除術
  • 硬化剤を痔核に注入する「ALTA(ジオン注射)療法
  • 痔核の根元の血管を結紮(しばること)して切除する「結紮切除術

手術は日帰りで済むものから数日間の入院が必要になるなど、病院や治療法によって異なります。

いぼ痔の予防法

いぼ痔の予防法として以下3つがあります。

  • 生活習慣の見直し
  • 血行促進
  • 便秘対策

それぞれ解説いたします。

予防法1生活習慣の見直し

いぼ痔を予防するためには生活習慣の見直しが大切です。
長時間座りっぱなしを避け、寒い場所に居続けないよう注意しましょう。
また、お酒や香辛料などの刺激物は肛門を刺激し、いぼ痔を悪化させる要因にもなるため控えるようにしてください。

予防法2血行促進

冷えは血行を悪くし、いぼ痔を悪化させる原因となります。
温かいお風呂に入って血行を促進させるようにしましょう。
また、適度な運動は腸の動きを活発にし、肛門周囲の血行促進にも効果的です。

予防法3便秘対策

産後の便秘はいぼ痔の大敵です。
排便時にいきまなくて済むよう、緩下剤を利用したり、長時間便座に座り続けないようにしてください。
便意を感じたら我慢せず排便する習慣も大切です。

また、食物繊維や水分は腸の動きを活発にします。
穀物・芋類・ひじき・寒天・果物など食物繊維の多い食品をとるようにしましょう。
とくに授乳中は水分補給が大切です。

まとめ

産後は、大きくなった子宮や便秘などが原因で肛門周囲の血流が悪くなり、いぼ痔ができやすくなります。いぼ痔になってしまったら肛門を清潔に保ち、むやみに触らないようにしてください。洗いすぎるとかえって悪化する場合もありますので、注意が必要です。

もし、いぼ痔が飛び出したときには、そっと押し戻してください。戻すコツは、指で押さえながら立ち上がるようにします。出血や痛みが続いたり、中に押し戻せなくなったりした場合は、無理をしないようにしましょう。

いぼ痔の予防法と早期受診に努め、悪化させないよう心がけましょう。

当院の大腸内視鏡検査

監修

医療法人社団晃輝会
理事長 医学博士 大堀 晃裕

日本大腸肛門病学会 専門医・指導医 https://www.coloproctology.gr.jp/

大学病院と総合病院に長年従事し、肛門病疾患を中心に大腸肛門病に対して多数の検査実績、手術への豊富な執刀経験を持ちます。
日本大腸肛門病学会の中でも数少ない専門医・指導医として、治療だけでなく技術指導を行なっています。
現在医療法人社団晃輝会の理事長として大腸肛門病・消化器内科の専門クリニックを2院展開し、胃・大腸内視鏡検査を年間2,700件以上、手術も年間500件あまり手掛けています。

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